成瀬ディレクター
遠そうで近いかもしれない「ルワンダと日本」
「殺人者34万人の帰郷~ルワンダ虐殺 22年目の“声”~」これはどんな番組ですか?
1994年にルワンダ虐殺がありましたよね。あの時39万人が殺人をして被害者が80万人もいる、今、ルワンダは死刑がなくて刑期を終えた人が戻るんです。34万人っていうのはそのうちのすでに帰郷している人なんですけど、どんどん戻っていて、被害者遺族もいっぱいいるわけじゃないですか、そのどんどん戻っているというのはどういうことなのか、ちゃんと国としてうまくやっていけるのか、というのを取材するために実際に出所する人の出所から帰郷を撮った番組です。
実際、殺人者を主人公に撮影するのはどうでしたか?
殺人者の人たちは刑務所に入って、それから今度は強制労働をする所に行ってから出るんですけど。強制労働所ではかつて人を殺した道具の鉈とかを持って畑作業をやっているんですよ。まずその景色も、その状況自体もとても呑み込めないし、別に悪い人にも見えないし、ただこの人たちは人を殺しているっていうのは不思議な気分でした。あと、虐殺はもともと仲の良かった隣人を隣人が殺していて、おそらく、みんな極悪人っていうわけじゃなくて人を殺しているだろうと、だから普通に鉈で草刈とかをやっている人、一見、普通に見える人が何故人を殺したのかを見るのが番組なんだろうなと思ってやっていました。
帰郷に密着したのはどんな方ですか?
今回の番組で言うと殺した側で取材した2人のうち1人は800人くらい殺した人、この人は勉強が出来て、人に褒められるのが好きで真面目なタイプ、優秀な人、外資系でも働いていたような外国語をしゃべれたりするエリートが殺人を率先してやっていた。もう1人の人はTVも見たことないし、たぶんラジオもないんじゃないかな、そもそも知識とか勉強とかをしたことがないような人、誰かに「こうだ」って言われたらそれについていくしかないっていう人でした。
取材をする中で、「本当にこの人、人を殺したんだな」と恐怖を感じる時はありましたか?
800人を殺した人はちょっと怖かったですね。ただ、今、政府の方が怖いからその人は監視されているし、周りからも何かあればまた捕まっちゃうし、おとなしいですよ。だからそこはそんなに怖くないんですけど、むしろそういう国の力がものすごく強いことの方が怖いです。反省できない人は結構、殺されちゃったりするから。
結局、34万人を殺した殺人者っていうのは国がそういう人を作りだしたというか、誰でも殺人者になりうるということなんでしょうか?
たぶん、そういうことなんでしょうね。今だと比較的アフリカなんかそういう暴動が起きて人を殺す、みたいなことも起きてるけど、もしかしたら昔の日本人も似た様なことだったかもしれない、「アメリカ人を殺せっ」てなれば、なりますよね。
印象深かったシーンは?
出所した元囚人が殺した人の遺族に謝りに行くんですよ。「謝りなさい」って言われるから謝りに行くんですけど、その謝られるのは殺された人のお兄さんなんです。まさにその瞬間に立ち会うわけですが、緊張感がすごくて。謝りに行く方は怖いからビクビクしていてますよね。村に行って「実は自分があなたの弟を殺しました。」ってなった時に村の空気が不穏になって、彼は生きて帰れないかもしれない、ってことになったんです。その村にとってみればこの村に住んでいる人の弟を殺した奴がやって来たってことだったんで普通に帰るのは危ないってことで車を目の前につけて守って逃げるみたいな時、あんまりこういうことに出くわすことは無いですけど緊張しました。
何日間くらいかけて撮影をしましたか?
2週間弱くらいですかね。撮影は2週間弱でロケハンは10日くらいです。
全部の制作期間はどれくらいでしたか?
3ヶ月半くらい。
景色や人など映像がすごく綺麗だと思ったのですが、そのあたりで気を使ったところはどんなところですか?
ナレーションがない番組の場合はカット数が通常の2/3ぐらいなんですよ。たぶん、情報を絵の中で説明するのではなくて、状況の中で理解してもらうとなるとワンカットが長くなると思うんですけど、そういうのに耐えられるような映像であったり、説明的では無くて関係性であったりとか、そこで起きているものの中から何かみつかるような絵を撮らないと成立しないので、そこも含めてグッとくる絵になった方がいいなと思いました。
企画自体はどうやって生まれたのですか?
もともとNHKで「ノーナレーションのドキュメンタリーをやりたいです。」っていう企画募集があったんです。それでこれやってみたいなって思ってその公募に応募した企画です。
このテーマはどこから見つけたのですか?
アメリカ人の記者が今、ルワンダで殺人者が帰っているっていう記事があってそれを見て書きました。
今後、新入社員を募集していくんですが、どんな人と一緒に仕事をしたいですか?
ウソをつかない人。そういうのって結構重要ですよね。人としてちゃんとしているか、人を裏切らないとか、約束を守るとか、そういうのって大切だけど局面、局面で出来なかったりするんですよね。そういうなんか根本的に人として信頼される人、というのはとても重要だと思います。 結局、取材するのって、人がどう思うかというのを想像することがたぶん8割くらいの仕事だと思うんですけど、想像力ですよね。今、この人傷ついたとか、こういうこと言われて人ってどう思うんだろう? そういうことをちゃんと考えられる人、いくつになってもそういうことがちゃんとしている人の方が演出もちゃんと出来るような気がします。 あと、真面目に番組を作ろうというよりは、なんかこういう仕事、楽しそうだなってワクワクしている人はいい仕事をするので「仕事を求められるように頑張ろう」と真面目にやるよりは、生き生きとワクワクしながら日々を過ごせる人に期待もするし面白いものを作るんじゃないかと思います。
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