成瀬チーフディレクター
コントを作りながら

これまでのキャリア
2000年入社。入社26年目。
2001年 NHK「真剣10代しゃべり場」でディレクターデビュー
NHK「グランジュテ」「いのちドラマチック」「旅のチカラ」「世界で一番美しい瞬間」「殺人者34万人の帰郷~ルワンダ虐殺 22年目の声~」(ATP賞・ギャラクシー賞受賞)など
「コント」と「ドキュメンタリー」
今、NHK「コント×ドキュメンタリー 笑う会社革命」を制作しています。
日本のサラリーマンが「直面する課題」と「解決のヒント」をコントとドキュメンタリーで探る番組です。
これまでドキュメンタリーを主に制作してきた私にとって、コント台本を書くのも演出するのも初めての経験です。しかもコントの主演は生瀬勝久さん。
40年、映画やドラマ・舞台で笑いを演じ続けてきた大ベテランです。
生瀬さんとの初顔合わせは、収録当日。
楽屋で向かい合い、番組のねらいや演出について話すものの、生瀬さんは終始無言。
最後に「脚本で気になった点は?」と聞くと、間髪入れず「ありません」。
「ありません」=「良い脚本」という事ではないことは、書いた自分が一番わかっています。
そこで感じたのは「役者は用意された脚本を演じるのが仕事」という気概でした。
メイクが終わり本番前のリハーサル
そこで役者・生瀬勝久の凄みを見せつけられることになります。
台本を大きく変えないものの、行間にアドリブが織り交ぜられていきます。
しかも、リハーサルの度にアドリブを変化させながら。
その自在さにスタジオは笑いに包まれ、和気あいあいと進んでいきます。
しかし、「笑いとはこういうものだよ」という
真剣勝負の投げかけを浴びる私には、笑いながらも笑えない時間でした。
「笑い」とはどういうものなのか。アドリブはもちろんですが、演技をよく観察すると、
常識的な「人の反応や動き」を少しだけ「はみ出ている」瞬間がつくられていることに気づきます。
「セリフの前の“間”が少しだけ長い」とか部下にキレられた時に思わず「耳たぶを触る」とか、過剰だけどリアリティを失わない、絶妙にデフォルメされた空気を作ることで「緊張感」を生み「開放」する、そこに人の愛らしさが生まれ、笑いが起きているのです。
この「少しはみ出している」ところに「人間らしさ」が生まれるというのは、ドキュメンタリーでも数多く経験してきたものでした。
被写体の「怒り」「笑顔」「沈黙」「身体の動き」などが、我々の想像を「はみ出た瞬間」にその人の人生が立ち現れてきます。それを映像で捉えない限りヒューマンドキュメントは成立しません。
その瞬間をいかに誘発するか、またどんな距離感でどう切り取ると最も効果的に映像化できるか。様々な場面で判断し、撮影現場を動かすのがディレクターの仕事です。
生瀬さんの凄みを感じながら、人間を撮るのはフィクションでもノンフィクションでも共通するものだと改めて感じました。
変化を迫られる「ビジネス」と「テレビ」
「コント×ドキュメンタリー」のドキュメンタリーパートでは、サラリーマンが働く現場に赴きます。そこには、いつも独特の「緊張感」が漂っています。
「来年、会社がなくっているかもしれない」と真顔で答えたのは、年商9000億円の上場企業の部長。世界を舞台にシビアに結果を求められるビジネスの世界では、「時代の変化に対応し、進化しなければ存続できない」という切迫感が、職場全体に浸透しているように感じます。
業界を牽引して「爪痕を残さなければ」と語る部長ですが、一方でいつもニコニコとして周りを安心させる空気をつくる人でもあります。
企業を率いる人たちにたくさん出会いましたが、共通するのは「人柄の良さ」と時おり見せる「使命感」。
「社員の生活」「会社の存続」「日本経済の発展」「人類の未来」、そんなことを本気で考え背負っている、彼らアンサングヒーローが社会を支えているのだと思います。
そして「変化に対応できなければ存続できない」のはテレビも同様です。
2025年2月の週間視聴率ランキングを見ると、1位「笑点」(13.3%)2位「NHKニュース7」(13.1%)。テレビは「シニア層向けメディア」にシフトし、ニュースやスポーツなどリアルタイム性のあるものが求められる時代になっています。
SNS、YouTube、Netflixなど、動画プラットフォームの選択肢が増える中で、ライバルが「やらないこと・やれないこと」は何か。その一つがマスメディアに本来求められてきた「公共性」だと思います。
硬派な面では社会にアンチテーゼを投げかける「調査報道」であったり、幅広い視点では「教育番組」「情報番組」で『常識や当たり前だと思っていたことを覆すモノの見方』を提示していくことだと思います。ジャーナリズムとしては、ときに「不愉快な真実を突きつける」覚悟も必要でしょう。
さらに、他のプラットフォームがつくる映像の中で埋没しないためには、これまでの「世代」をターゲットにした作り方から「個々の興味」に深く刺さるだけの取材量や演出が必要とされると考えています。
就活生へのメッセージ
このサイトを見ている皆さんは、きっとこれまでに映像に心を動かされたことがあるのだと思います。そんな皆さんたちから、これからも面白いものが生まれてくるのだと思います。
これまでのやり方を変えていく必要に迫られている今だからこそ、若い発想がフロンティアを開拓していく力となるはずです。
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